東京都が「豪奢品」の販売を控えるよう求めている都内の百貨店=東京都新宿区で

 生活必需品に当たらない高級衣料品などの「豪奢ごうしゃ品」の販売は控えて―。新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言の延長に伴い、東京都が百貨店に出した要請への対応にばらつきが出ている。一部の店では「価格で線引きできない」と高級ブランド服の販売を継続している。都の狙いは人流の抑制による感染防止だが、販売を続ける百貨店の間からは、コロナ禍による売り上げの激減に対する悲痛な声も聞こえる。(小倉貞俊、岡本太)

 都の通知は12日付。日本百貨店協会から会員企業に周知された。都は先月25日の宣言発令以降、「食品などの生活必需品売り場を除く休業」を求めていたが、12日の宣言延長に伴い、必需品を拡大解釈する動きが出ていたからだ。

 通知を受け、西武池袋本店はルイ・ヴィトンやエルメスなどの高級ブランド店舗を今月20日から休業した。

 12日から高級ブランド服の販売を再開した高島屋日本橋店は、利用客の要望を重視し、営業を継続。担当者は「衣料品は生活必需品。高級かどうかはお客さまの価値観。線引きは難しい」と説明する。

 16日から高級ブランド店について完全予約制での接客を再開した大丸東京店は「一般向けの営業は行っておらず、要請に従っている」との立場だ。

 伊勢丹新宿店は当初、豪奢品の定義を「ダイヤモンドが付いているような婦人服など」と判断。一部商品の販売を取りやめるだけで、高級ブランド服店の営業を継続した。その後、23日からの休業を決定。「ブランド店側からの申し出があり協議した」という。

 都は、豪奢品の定義に関する問い合わせが相次いだため「海外の高級ブランド品、オーダーメードの高級服飾品・靴、高級宝飾雑貨」などと例示した。だが、百貨店側はその他の商品の販売なら可能とみなしているようだ。

 「豪奢品」などの販売の背景には、休業協力金が支給されても「とても売り上げの減少に見合わない」(ある店舗担当者)との事情もある。大手百貨店の場合、一日の売り上げは数億円以上に上る。

 都の担当者は「要請はお願い。各店の判断に委ねるしかない。ただ目的は人の流れの抑制なのだが…」と営業再開の動きに戸惑う。百貨店だけでなく、各ブランド本社にも個別に要請を始めているという。

大型商業施設への休業要請 都は百貨店やショッピングモールなど床面積1000平方メートル超の大規模商業施設に休業を要請。4月25日~5月31日の緊急事態宣言期間中に全面的に応じた場合の協力金として、休業した直営の売り場面積1000平方メートル当たり1日20万円(出店店舗・テナントは1日2万円など)を支給する。

◆「生活に必要」決めるのは誰? ジュエリー職人の反発

「生活必需品かどうかはその人次第では」と話すジュエリー職人の貞清智宏さん=東京都渋谷区で

 「人間ひとりひとりが必要とするものを他人からジャッジされることに、強い違和感と抵抗感を感じます」

 伊勢丹新宿店に売り場を構えるジュエリーブランド「hum(ハム)」(渋谷区)は15日、公式インスタグラムに貞清智宏社長(41)名で書き込んだ。「ジュエリーやアートが人生に必要ないと考えるのでしょうか」。伊勢丹は先月の緊急事態宣言発令以降、ジュエリーや美術品を「生活必需品」とみなさず、売り場を一貫して閉じている。

15日に公式インスタグラムに投稿したメッセージ

 職人の貞清さんとデザイナー稲沼由香氏の2人で立ち上げたハムは、1点ずつ手作業で作り、リサイクルされた金属素材の活用、正規中古品の販売など持続可能性も意識して活動。顧客とのコミュニケーションも大切にしてきた。今回「豪奢品」と判を押され、一律に販売を否定されることに黙ってはいられなかった。

 休業要請の対象などの線引きが、科学的なデータに基づく合理的判断とは思えないことも割り切れなさを増す。インスタのコメントでは応援の声が寄せられる半面、フォロワーは100人ほど減ったという。それでも「賛否は気にしない。どう感じたか、考えてもらいたい」。(小嶋麻友美)

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