新型コロナウイルスの感染拡大の影響でホテルや旅館など宿泊業の苦境がいっそう鮮明になっている。

   東京商工リサーチによれば、2020年度の宿泊業の倒産は100件を越え、東日本大震災後に自粛が広がった2011年度(141件)以来の悪化になる見通しだ。かつてプロ野球のドラフト会議が開かれた東京都千代田区の「ホテルグランドパレス」が2021年6月末で営業を終了するなど、有名ホテルの休館や廃業も相次いでいる。


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「GoToトラベル」も潤ったのは高級ホテルだけ

   東京商工リサーチによれば、2020年4月から2021年2月までの宿泊業の倒産件数は114件にのぼり、すでに2019年度(74件)の1.5倍に上る高水準だ。新型コロナウイルスに関連する倒産はこのうち約半数を占めるという。

   感染防止のための事実上の国境封鎖で外国人観光客(インバウンド)が激減しているほか、緊急事態宣言の発令で外出自粛が広がり、宿泊客は大幅に減少。政府は観光キャンペーン「GoToトラベル」を展開し、需要の喚起を図ったが、お客が集まったのは一部の高級ホテルなどに限られ、恩恵を受けない中小規模の宿泊施設も多かった。

   そのキャンペーンも、感染の再拡大で中断を余儀なくされている。こうしたなか、「業績がもともと悪かったり、債務を抱えていたりした企業がコロナ禍にダメ押しされる形で、経営破たんしたところが多い」という。

   そして、ここ最近目立っているのが、有名ホテルでさえも営業を終えるケースだ。ホテルグランドパレスは当初、しばらく休止して需要動向を見ながら再開する予定だった。

   しかし「感染の長期化で業績回復の行方は不透明になった」といい、2度目の緊急事態宣言でキャンセルが相次いだことから営業休止はやむを得ないと決断した。老朽化した施設を改修しなければならない事情も響いたという。

サブスクリ型の宿泊サービスに活路

   こうした動きは地方都市にも広がっており、鹿児島県霧島市の「霧島国際ホテル」は5月20日で営業を終了し、半世紀の歴史に幕を下ろすことになった。「コロナ禍により安定的な事業運営の見通しが立たず、営業を続けるにはリニューアル投資が必要で、事業継続は困難」と説明する。宿泊業は定期的に大きな投資が必要となる装置産業であり、先行きも見えず、体力がなければ持ちこたえられないのだ。

   厳しい状況は各地の宿泊業界を万遍なく覆っているが、苦境下でも新たな需要を作ろうという取り組みも少しずつ生じている。

   その一つが、「月額料金で使い放題」というサブスクリプション型の宿泊サービスだ。帝国ホテルや、傘下にホテルを持つ三井不動産グループなどが続々と乗り出している。関係者によれば、ホテルのサブスクは「旅行に行けずにストレスをためている人や、テレワークをする人たちに好評」といい、発売と同時に完売してしまうケースもあるという。

   「コロナ禍からの回復には数年かかる。回復期まで、いかに工夫して客を呼び込めるかが生き残りのカギになる」(業界関係者)との声もある。宿泊業は、まさに正念場を迎えている。(ジャーナリスト 済田経夫)

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