コーナリングも楽しめる
センチュリーはそのキャラクターとは裏腹に、ここ一番では5リッターV8のエンジンキャパに300N・mのモーター駆動も加わった侮れない加速力をみせるが、TOM’Sセンチュリーはそこに適度な音量のエキゾーストノートを重ねることでドライバーの高揚感をふんわりと高めてくれる。
前述の通り仕事場的な運転席環境ゆえ気づきにくいが、センチュリーにはドライブモードセレクターがあり、メーター内のファンクションモニターを介して「スポーツS」や「スポーツSプラス」への変更が可能だ。オーナーや賓客を送り届けた後は運転手の憂さ晴らしというわけではないだろうが、そのシークレット的な機能をTOM’Sセンチュリーはうまく生かしていて、コーナーでも低ロール&バウンドの安定したコーナリングが楽しめる。昨今の総体的にクイックなレシオに慣れた身には、やはり切り返しやタイトターンでの操舵量は多めかなという感じだが、径が小さめのステアリングのおかげで取り回しに煩わしさはない。そして足まわりの変化によって操舵フィールがグッとリアルさを増しているのにも感心させられた。
果たしてセンチュリーにそういうことを望む人がどれだけいるのかという見方もあるだろう。が、嗜好(しこう)は多数決によって排除されるものではない。36という限定数を手にするオーナーのためにしっかりとTOM’Sが手を尽くしたモデルとあらば、その価値はファンにとってプライスレスだろう。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
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