安倍前首相の不起訴を伝える東京・新宿のモニター=24日、東京都新宿区で

 「桜を見る会」前日に主催した夕食会の収支を巡り、東京地検特捜部が安倍晋三前首相を不起訴とした判断は妥当だったのか。市民からは「『秘書のせい』がまかり通るのか」と疑問の声が上がり、告発した人たちは検察審査会への審査申し立ての検討に入った。

◆高級ホテル前で「1人5000円で済むはずない」

 「桜を見る会」前日の夕食会場となった都内の高級ホテル前。通り掛かった相模原市南区の会社員中村浩一さん(60)は「ここで会費が1人5000円で済むはずないのは常識。事務所がいくらか出したとすぐ分かる。安倍氏は知らないふりして秘書に責任を押しつけず、政界引退を」と厳しい。

 「桜を見る会」の会場・新宿御苑の周辺でも批判が聞かれた。会社員野口岳史さん(56)は「安倍氏が(夕食会の費用の)経緯を知らないわけはない」と疑う。「国会で説明するにしても、のらりくらり答弁するなら時間の無駄」と付け加え、不信感を隠さなかった。近くに住む無職藤塚有枝さん(82)も「結局、政治家は秘書のせいにする」と冷ややか。一方、近くで働く自営業男性(85)は「(補塡ほてんした)金額からして、不起訴は妥当」と東京地検特捜部の判断に理解を示した。

 コロナ禍でもクリスマスイブに向けた買い物客らが行き来した東京・銀座。世田谷区の家事手伝い鮫島いづみさん(57)は「昭和の時代から政治家は『自分は何もしてない』で事件が終わる。日本はそういう国」とあきらめ顔。相模原市南区の会社員小田卓司さん(47)も「いつものごとくトカゲのしっぽ切り。こんなことが続くから、政治への関心が薄れていく」と話した。

 ツイッターでは「#安倍晋三の不起訴処分に抗議します」のハッシュタグ(検索目印)を付けた投稿が24日午後6時時点で約17万件を数えた。(梅野光春、奥野斐)

◆「本当に捜査尽くしたのか」検察に失望と怒り

 安倍氏を政治資金規正法違反(不記載)の疑いなどで告発した弁護士有志らは24日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見した。「本当に捜査を尽くしたのか」と検察への失望と怒りをあらわにする一方、処分を不服として検察審査会への審査申し立てを検討していると明らかにした。

 「安倍氏は刑事責任を問われるべきだ。今回の処分は納得できない。非常に手ぬるい」。有志の1人、小野寺義象弁護士は怒りをにじませた。

 特捜部は安倍氏を21日に任意で聴取し、わずか3日後に不起訴とした。

 小野寺弁護士は「共謀の有無は簡単に分かるものではなく、本来なら家宅捜索や押収などの強制捜査を行う」と疑問を示し、「安倍氏を不起訴とする裏付けを取るため、形式的に聴取したとしか思えない」と批判した。

 泉沢章弁護士は、特捜部が配川博之公設第一秘書を略式起訴にとどめ、東京簡裁も正式裁判を開かない略式命令で罰金刑を言い渡したことに触れ、「何年にもわたり政治資金収支報告書に記載しなかったことは非常に悪質。略式で終わらせるのは大問題だ」と非難した。(山下葉月)

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