初夢体験! 3600万円のゴーストとは、いったいどんなクルマなのか

高級車で重要なのは“スペック”などではない

ロールス・ロイス史上最も販売されたゴーストが昨年2020年9月にフルモデルチェンジ。その試乗会が奥日光で開催されたのでレポートする。

通常の試乗記であればモデルの詳細や解説をした後、実際に乗ってみてどうだったのかというストーリーになるのだが、今回はあえてそうはせず、その世界観をもとに雰囲気を楽しんでもらいたい。エンジン出力は何馬力、燃費はいくつと語ったところでこのゴーストの神髄を語ることはできないと思ったからである。もっとも私のお財布では購入することは不可能なので、夢を語るようなところもあるかもしれないが、そこは新春ということでお許しいただきたい。

最寄りの駅までお迎えに来てくれたのもロールス・ロイス

今回試乗会場に選ばれたのは栃木県の奥日光。中禅寺湖や戦場ヶ原がある地域である。東京から2時間少々、東北道宇都宮インターから日光宇都宮道路を経由、いろは坂を登り切った先が目的地だ。

今回は時間節約のため、新幹線を利用。宇都宮駅にはゴーストとカリナンブラックバッチがお迎えに。まさにロールス・ロイスの真骨頂、ショーファーカー(お抱え運転手が運転するリムジン)として味わってみる。

我々にあてがわれたのはロールス・ロイス初のSUVモデル「カリナン ブラックバッチ」だった。

観音開きのドアを開けてもらい室内に乗り込むと、パープルのインテリアカラーが出迎えてくれる。そのカラーは上質でいやらしさは全く感じない。ショーファーに運転を任せ、今回ペアを組む同業者やオフィシャルカメラマンとともにおしゃべりを楽しみながら奥日光へスタート。SUVタイプとはいえ静粛性は高く、ロードノイズはほとんど感じない。すでにここからロールス・ロイスワールドが始まっていた。

およそ1時間で奥日光のホテルに到着。一息ついた後、ゴーストの説明を受け試乗会のスタートだ。

ゴーストは、ロールス・ロイスが考える“ミニマリズム”だった

意外!? コンセプトは「脱・贅沢」!

新型ゴーストは脱贅沢(ポストオピュレンス)をコンセプトに開発。エクステリアデザインは無駄を廃して仕上げられ、それはインテリアも同様だ。あくまでもロールス・ロイスらしさ、つまり上質でありながらも華美にはならず、極めてシンプルにデザインされているのだ。

実はこういった方向性は“普通”のクルマの開発と同様の手法が取られている。つまりマーケティングリサーチだ。

先代ゴーストについて、同社最高経営責任者のトルステン・ミュラー・エトヴェシュ氏は、「全く新しい世代の顧客層のニーズを満たすために開発されました。こうしたお客様は、やや小ぶりで、さりげない存在感のロールス・ロイスを求めており、このニーズに応えた結果、2009年以降、10年間でロールス・ロイスの歴史上、最も多くの販売台数を誇るモデルになったのです」という。

余分なものを削ぎ落とした高級品

そして、この新型においても「今後の10年に向けて、お客様が何を求めているのか耳を傾けました。ゴーストのユーザーである実業家や起業家などの方々は、ダイナミックで、静粛性と快適性に優れ、ミニマリズムを極めた新しいタイプのスーパーラグジュアリーサルーンを求めていることが分かりました。また、余分なものを削ぎ落とした高級品に目を向けてもいたのです。彼らは過剰で不要な装飾を排除したシンプルなデザインを求めており、そこから脱贅沢(ポストオピュレンス)と呼ぶコンセプトへ移行していったわけです」と説明していた。

今回与えられた試乗車は真っ白に塗られたボディカラーで、まるで日本の白磁のようなイメージ。まさに清潔で質素、しかしどこか艶やかさを感じさせるエクステリアだ。やはり塗装も含めてお金を掛けなければ出来ない仕上がりといえよう。

まずはショーファーカーとして後席を楽しんでみる

新型ゴーストには、二重窓の中間層に加え、ドアやルーフ、骨格の構造部、タイヤ内部に至るまで、合計100kgを超える防音・吸音素材が使用され遮音性を確保している

850もの星が散りばめられた異空間

ぐるりと一周してからクルマに乗り込む。まずはリアシートだ。

ゴーストのユーザーの多くは、平日はリアシートに、休日はドライバーズシートの座るというアクティブな方々が多いそうだ。ちなみにドアの大きさが前後で同じなのはこれが理由でもある(全長5.7メートルのロングホイールベース版「Ghost Extended(ゴースト エクステンデッド)」も用意される)。

さて、これまでのロールス・ロイス各車はドアを開けるときはかなりの重さを感じていたが、このゴーストはアシスト機能がもたらされたので、軽々と開くことが出来る。閉めるときはCピラーにあるボタンを押せばオートだ。ただし、結構な勢いで閉まるので注意が必要ではある。

近年のロールス・ロイス車で定番装備となった「スターライト・ヘッドライナー」は850個以上の小さな星が散りばめられている

いつの間にかエンジンがかかり、するするとクルマは中禅寺湖を左手に見ながら奥日光のさらに奥に向けてスタートした。後席はまさに快適の一言。残念ながら試乗車にシャンパンクーラーは備わっていなかったが、ゆったりと広々とした空間を満喫できた。

ショーファー付きは究極の“自動運転”

ここで気付いたのは2つ。

ひとつは先ほど乗ったカリナンと比較しはるかに左右方向のGが感じられないことだ。これは重心高が低いためで、より安定したコーナリングがそう感じさせていると思われる。

そしてもうひとつは静寂過ぎないことだ。ゴーストを開発する際にあまりの静かさは逆に不安感を生むため、わずかに“ささやき”を残したという。それが効果的で、きちんと移動しているという意識を持たせてくれるのだ。

フロア周りからの振動はほとんど感じられず、先代にあったフロア周りのよじれる感じは皆無だ。路面からの突き上げも、音はするものの体にはほとんど感じられないのは見事だ。また、こういった大型のセダン(やミニバン)でよく感じるのは、コーナーなどでフロントが旋回を開始して、僅かに遅れてリアが追従する動き方だ。これは特にフロアとリア周りの剛性が影響しており、クルマ酔いの要因にもなる。これに関してもゴーストでは全く感じられず、よりコンパクトなショートホイールベースのクルマに乗っている感覚だった。

まさにショーファー付きのゴーストは究極の自動運転といっていいだろう。

ロールスロイス/ゴースト
ロールス・ロイス ゴーストの基本は“ドライバー”にあった

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内田 俊一

筆者内田 俊一

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員記事一覧を見る

監修トクダ トオル (MOTA編集長)

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