「ライブ1回で100万円」ともいうチェキ収入が消えた――。AKB48の確立した「会いに行けるアイドル」というスタイルが、新型コロナウイルスによって根底から揺らいでいる。「会いに行けなくなったアイドル」は、「コロナ時代」に生き残ることができるのか。2019~20年にメジャーデビューした新鋭アイドルグループのプロデューサー3人に聞いた。(取材・文:宗像明将/Yahoo!ニュース 特集編集部)

新型コロナ感染拡大でツアー中止、1000万円超の損失に

「大型ライブハウスのレンタル料、照明、音響、舞台監督、演出の人件費、チケット代、それに100万円から200万円売れるかもしれなかったグッズなどの物販の売り上げのお金を入れたら、ツアーの損失は1000万円を超えますね」

今年2月にメジャーデビューしたアイドルグループ「煌めき☆アンフォレント」のプロデューサーである「へなぎ」さんは、そう語る。5月に予定していた、東京・大阪・名古屋でのツアーが新型コロナウイルスの影響で中止。一瞬にして、多額の損失を抱えることになった。

ライブに出かけ、ステージを楽しんだ後に特典会(握手や記念撮影などを実施)でメンバーにも会える。規模やシステムに違いこそあれ、日本のアイドルシーンは、そうしたシステムの上に成立してきた。へなぎさんは言う。

「今までの収入は、ライブ後の物販のチェキ(インスタントカメラ)撮影が6割ぐらいですね。チェキの売り上げは1回で数十万円、ワンマンライブだと100万円を超えます。それが軒並みなくなってしまった。東京と名古屋に事務所があるし、バーも経営しているから、スタッフも多くて維持費がかかる。メンバーにたくさん還元してあげたいし、余裕を持つために初めて国に金を借りに行こうと思ってますよ」

煌めき☆アンフォレント

最大の収入源であるライブができない間、メンバーへの給料はどうしているのだろうか。煌めき☆アンフォレントの場合、「在宅ワーク」になっているという。「デコチェキ」と呼ばれる、メンバーからの書き込みが多いチェキを通販している。

「手間はかかるけど、メンバーも暇ですから。数十秒しか話せない普段のライブと違って、1枚1枚に時間をかけて、感謝を込めることもできます。1枚5000円で60枚売れれば30万円。その半分をメンバーにあげても15万円。なんとか15万~20万円は渡せても、普段の給料に比べたら落ちます。それに、頭を使っていろいろやっても、たぶん続いて3カ月。でも、今いるファンからむしり取るだけのゲームには絶対にしたくないから、新規開拓や話題作りのためにSNSで『振りコピ選手権』の企画も始めてるし、頑張るしかないですよ」

2020年4月初旬。普段なら多くの若者が道路にあふれる東京・渋谷の円山町のライブハウス密集地帯は、静寂に包まれていた。「密閉・密集・密接」の「3密」の場として名指しされたライブハウス。円山町のライブハウスは、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の感染拡大を受け、3月中旬から営業自粛を余儀なくされている。一帯は閑散とし、近隣のラブホテルに出入りする人影がたまに見受けられるのみだ(撮影:編集部)

記念すべきメジャーデビューで、無観客ライブ配信とネットサイン会に

記念すべきメジャーデビューのタイミングに、新型コロナウイルスが直撃したアイドルもいる。先月18日にメジャーデビューしたアイドルグループ「真っ白なキャンバス」は、CDショップでのリリースイベントが軒並み中止になった。プロデューサーの青木勇斗さんが語る。

「ファンの皆さんに用意していたコンテンツがごっそり抜けて、不安はありますね。ファンの皆さんと触れ合えない期間があるのは、メンバーたちにとっても負担になっていると思います」

真っ白なキャンバス

そんななか、打開策の一つとして考えられているのが、無観客ライブの配信だ。何台ものカメラを使い、テレビの生放送さながらにスイッチングする。スマートフォンやパソコンで視聴でき、チャット機能でファン同士が会話もできる。

真っ白なキャンバスもメジャーデビュー当日に無観客ライブを配信した。

「レコード会社にコストを負担してもらって配信をして、ライブ後にインターネットサイン会をしたんです。お金が発生するコンテンツも開催して、なんとかマネタイズした感じです」

普段のサイン会の場合、アイドルとファンが一緒にチェキを撮影して、その場で歓談しながらサインをする。インターネットサイン会の場合は、まずアイドルだけでチェキを撮影。配信用カメラに向かってファンの名前を呼んで雑談をしながら、チェキにサインを書く流れだ。1枚は2000円からが相場。近距離で直接対面できる「特典」がないインターネットサイン会では売れる枚数が落ちるかと思いきや……。

「ネットだと、普段チェキが売り切れないメンバーも売り切れたりします。1時間の配信で、サインできるチェキは300枚前後ですね。サイン会のYouTube配信やチェキ配送をしてくれる会社に25%ぐらいお支払いして、あとは僕らに入ってきます」


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