何十年も付き合える音楽の友

この記事を開いたオーディオ好きの貴方、イヤフォンで、ヘッドフォンで、あるいはスピーカーで、普段から思う存分音楽を楽しんでいることだろう。コーヒーブレイク中に一曲……そんな愉しみ方も良いが、思い出の1曲を何度も繰り返し味わい尽くす、これもオーディオが与えてくれる音楽との素敵な付き合い方だ。

そんな音楽を楽しむのに、奏でる機材も思い入れを持って選びぬきたいもの。新機能を搭載した最新モデルへと次々に買い換えるのも良いが、ひとつのスピーカーやアンプと何年もじっくりと付き合うスタイルがあっても良い。個人的にはこちらのスタイルが好みだ。もし貴方が僕と同意見であるならば、オススメのスピーカーがある。価格はペアで52万円と、あんまり気軽に買える値段ではないが、もしかすると貴方と何十年も付き合う音楽の友になるかもしれない1台だ。

ブランドは、僕も長年愛用しているスピーカーを手掛けるSonus Faber(ソナス・ファベール)。その新作ブックシェルフ「MINIMA AMATOR II」(ミニマ・アマトール 2)だ。

現代技術で解釈する過去の遺産

北イタリア、ベネット州ヴィチェンツァ。地中海の真珠と名高いヴェネツィアにも程近いこの街に、故フランコ・セルブリン氏はソナス・ファベール社を設立し、音と造形の美を追求していった。1980年にはブランドの処女作「ELECTA AMATOR」(エレクタ・アマトール)を発表。しっとりとした木肌のキャビネットとプリマ・ドンナの歌声を持つこのブックシェルフスピーカーはたちまち世界のオーディオファンの知るところとなり、以降フランコ氏は優雅な木工細工で仕上げられた美声のスピーカー“作品”を数多く手掛けてゆく。

今回の主役であるミニマ・アマトール 2は、93年にデビューした初代「MINIMA AMATOR」のリバイバル作品で、ソナス社初期に発表された旧モデルを「伝統の技術と確かな音楽性が最先端のテクノロジーと融合」によって現代へリバイバルするプロジェクト「HERITAGE COLLECTION」(ヘリテージ コレクション)ラインのひとつである。

例えば現行モデル「Olympica NOVA」(オリンピカ ノヴァ)シリーズは完全新作として、造形も音もゼロから新規設計している。特にサウンドデザインはコンピュータシミュレーションを積極的に導入し、現代のハイレゾ音源をより意識した傾向でまとめ上げている。対してヘリテージ・コレクションはフランコ氏が遺したサウンドとシェイプのデザインをより尊重しつつ、現代のテクノロジーと解釈を加えてまとめ上げたものだ。そのためヘリテージ・コレクションの作品群は、完全新作の作品群よりも旧作の香りを色濃く漂わせる。個性が強く、その分だけハマった音源の表現はより深いものを見せてくれるのが、このシリーズの大きな個性なのだ。

左からOlympica Nova III、V、I(Stand Olympica NOVA装着時)

毎日使える旗艦技術

技術的な見所は、ツイーターに採用された「DAD(Damped Apex Dome)」がまず挙げられる。ソナスは最初期にシルクドームを、ストラディバリ・オマージュの頃にリングラジエーターをツイーターユニットへ採用していた。このDADはハイスピードなリングラジエーターと柔らかいソフトドームツイーターのいいとこ取りをするという独自技術のユニットで、高音部の理想を追求するにあたって2つの個性の橋渡し役となる、近年のソナスにおける中核技術でもある。

ツイーターだけでなく150mm径のウーファーも専用に新設計されたものをおごっている。中音・低音の幅広い帯域に対応するべく、自然乾燥セルロースパルプ素材をオリジナルでブレンドしているという。ソナスのブックシェルフは見た目以上に低音が良く鳴る。このウーファーによって、本機も伝統をしっかりと踏襲している。

28mm径ツイーター(写真左)と、150mmミッド・ウーファー(右)

ソナスサウンドのキモであるクロスオーバーネットワークだが、一ケタも二ケタも違う「HOMAGE Tradition」シリーズや「AIDA II」で採用された「パラクロス・トポロジー・テクノロジー」を本機にも採用。この位相合わせが、心地良い鳴りを支えているのだ。

一時期ソナスのスピーカーターミナルはシングルワイヤーのみだったが、本機のそれは初代機と同様にバイワイヤリング対応の4本出しが背面に付いている。インピーダンスは4Ωと能率は低めだが、税別52万円という価格にしては鳴らしやすく、案外とアンプを選ばずに機嫌良く歌ってくれる。こういう所も身近なフレンドリーさを感じる要素だ。

クレモナ・アウディトールはデンマーク・スキャンスピーク製の特徴的なデザインのユニットだったこともあり、フロントフェイスを比較すると些かおとなしい見た目になった事が気付かされる。独自のDADツイーター下部にはMINIMAの文字入りで、下部にブランドのプレートがあしらわれているのは相変わらずだ

懐かしいソナス・トーンが明るくなった

初期の銘品を“復興”させた本機の歌声も、実に興味深い。まず僕のリファレンス3曲で、その個性を聴かせてもらおう。

ハイレゾの定番楽曲「ホテルカリフォルニア」では、イントロで鳴るギターの煌めきをまず感じる。スチール弦の響きが星の瞬く夜空のように鮮やかで、この煌めきが全編にわたって音楽を支配する印象だ。ヴォーカルは熱を帯びていながらも落ち着いたトーンで、あまりグイグイと前に出てはこない。対してバックのエレキギターはエネルギーに満ち満ちていて存在感がある。ベースラインはシビアに聴くと若干モゴつくが、それでもよく締まって機敏に動く。反対に高音部のシンバルは鋭いキレを帯びている。

聴き込んでゆくと、中音/高音を中心に輪郭がハッキリしている事に気が付いた。僕はゼロ年代の同社作品「Cremona AUDITOR」(クレモナ・アウディトール)を常用しているが、この輪郭の描き方はいつも聴いている音とは明確に違う。反対に普段のサウンドとの共通点を感じたのは、音の立体感。クレモナ・アウディトールもステレオ音響による立体表現はなかなか見事なのだが、本機にもギターの配置に前後の奥行きを感じ、それが曲調と相まってどことなく哀愁を誘った。さり気ない、でも音楽として重要な表現である。

ジャズの名盤「ワルツフォーデビイ」。本機が歌う際の最大の聴きどころは、ビル・エヴァンスが奏でるピアノの健康的な色気だ。明らかに響きが豊かで、音の通りが良いからか、ベースもピアノも、どことなく明るく聞こえる。この明るい音色も、クレモナ・アウディトールとのささやかで決定的な違いだ。

ドラムセットはスネアもシンバルもブラシ音がなかなか肉厚だ。鋭いだけでなく、軽やかなのにしっかりとした存在感があり、無駄なくしっかりと響いていることを感じさせる。ダブルベースはよく弾んでおり、音楽の進行に活力を与えている。先程のホテルカリフォルニアではベースラインを「若干モゴつく」と評したが、録音の差だろうか、こちらはより輪郭がハッキリしている印象を受けた。特に中間部のソロパートでは実に動きが機敏で、音の芯がよく通っている事も相まって、音楽そのものに耳を傾けやすい。

そのソロの時に、バックへ移るピアノがスッと影になるのがまた好印象だ。こういうところから、視覚情報の無い音だけでもアンサンブルの意思疎通を確かに感じる。これもひとつ、音楽の熱量である。

ソナスといえばアコースティクサウンド、特にヴァイオリンをはじめとする弦楽器と、ベル・カントで歌われるソプラノは絶品、というのが僕の持論だ。実際にフランコ氏は弦楽器の鳴りに対して並々ならぬ情熱を注いており、クレモナの街にあるヴァイオリン博物館に氏の手によるスピーカーが納められた事からも、弦楽器サウンドの重要性が理解出来るだろう。

なので僕がソナスを鳴らすなら、ヴァイオリンは必ずと言っていいほど歌わせている。今のリファレンスはヒラリー・ハーンによる「バッハ『ヴァイオリン協奏曲』」だが、本作ミニマの歌声はヒラリー・ハーンのヴァイオリンが実に朗々と響く。胸の奥をサワつかせるが如く、とにかくヴァイオリンの音が有機的で、聴いていて自然と自分の熱が上がってゆくのを感じる。「これぞイタリアンサウンド、これぞソナス・トーン!」と、思わず膝を叩いた。

低音部はチェロとチェンバロのコンビネーションがとても良好で、エネルギーとボディ感をチェロが、動きと輪郭をチェンバロが上手く表現しており、自然と音楽を支えつつ前進させている。オケも全体的に朗らかで明るく、ソロ裏の微細なパッセージにも華がある。伴奏までしっかり愉しめるというのは、オケにとってとても重要ことだ。

この曲での発見は、ヒラリー・ハーンもやはり音色が明るいという事。先に指摘した通り、クレモナ・アウディトールで普段聴いている昔のソナスよりも明らかに音色が明るい。加えてオケの中でのヴァイオリンやヴィオラなどに耳を傾けると、昔と比べて粒が立っていると感じる。以前のソナスは「立体感とか粒立ちなんかよりも、私の色気をもっと聴いてよ!」と訴えかけてくるような音の雰囲気だった様に思う。本作は音の色気はしっかり孕みつつも、合奏時の細部表現と立体的な見渡しが良い方向へ、少しバランスを移動させていた。こういうサウンドの変化が、ハイレゾが普及してきたここ10年20年のオーディオ事情の変遷なのだろう。

魅力的な音の、流暢な音楽

明るくも艶めかしいこのソナスの性格は、大まかに掴めてきた。ここからはもっと色んな音楽をこの歌姫に歌わせてみよう、というところで一思案。はて、一体どんな音楽を聴かせてもらおうか……。

最も分かりやすいのは、やはり得意分野の弦楽や声楽を中心としたクラシックだろう。それでも良いかもしれないが、このミニマにはもっと多彩な可能性があるはずだ。小粋ながらも気取りすぎず、気の合う親友とのリラックスタイムを愉しむ、そういう肩肘張らない生活の音楽として、映像のために作られた音楽作品を、今回はあえてチョイスしてみた。

まずは映画音楽から、それもハリウッド映画のテーマ曲だ。と言っても普通のサウンドトラックではなく、ソナスらしい一捻りを加えたい。という事で、ジョン・ウィリアムズとウィーン・フィルという米欧の超ビッグネームによるコラボレーションで話題となった今年の新譜『ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ウィーン』から、映画「E.T.」の楽曲「地上の冒険」を聴いた。

何ということだ、演奏が始まって間髪を入れず、完全にこの曲の世界へ吸い込まれてしまった。冒頭から凄く華やかな編曲で、木管のトリルといい、金管のファンファーレ的旋律といい、音がとても色彩鮮やかでキラキラと輝いているのだ。祝祭的な雰囲気を音楽全体に纏わせた賑やかさが何とも印象的で、このキラキラ感がミニマのキャラクターと実によくマッチングしている。「E.T.」と聞けば誰もが思い浮かべるであろうヴァイオリンの有名なテーマから、メロディの合いの手として入るようなホルン、ベースを支えるテューバやコントラバスのロングトーンに至るまで、あらゆる音で音の煌めきが感じられた。

このメドレーは吹奏楽曲などでよく見られる“急緩急”の3部構成で編曲されており、中間部は楽器の数がグッと減った静かな構成だ。ここでは先述の華やかさが品の良さとしての香りを醸し出しており、静かな楽曲世界の中で優しくも明るい。音の立ち上がり・立ち下がりはとても上品で、発音から減衰まで、各楽器を聴いても全体を聴いても美しい。

そこからクレッシェンドを重ねてメインテーマの旋律へと至るのだが、静かな中間部から合奏に参加する楽器が増えてゆくことで徐々に音数が増え、それに伴って音量が上がる盛り上げ方が何とも素晴らしい。夜空を駆け登ってゆくワクワク感を見事に表現した、ジョン・ウィリアムズの天才的オーケストレーション術が炸裂している。そこへ更に重なり合う、“黄金の響き”と称えられる楽友協会大ホールの芳醇なホールトーンと、ウィーン・フィルのサウンドとアーティキュレーション表現によって、どこまでもどこまでも、昂揚感と多幸感で満たされていった。

そんな興奮のエネルギーを増幅して表現する最後のワンピース、それがこのミニマなのだ。煌びやかに輝くサウンドキャラクターは耳から入ってくる再生された音楽にひとつの生命を与え、かつて銀幕の中に観た傑作ハリウッド映画の情景を描き出す。映画をはじめとする映像作品のサウンドトラックを聴く時、僕の頭の中では、音楽の力を借りた映画が上映されるのだ。その映画を、あるいはホンモノ以上に鮮やかにする、それがこのミニマのサウンドだった。人間の想像力には限りがない、その想像を音によって果てることなく膨らませてくれる。ミニマが奏でるウィーン・フィルのハリウッド・ファンタジーは、そんな音楽の楽しさを存分に味わわせてくれた。

ジョン・ウィリアムズがウィーン・フィルを指揮して話題となった『ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ウィーン』。映画音楽で過剰な演奏表現を加えると映像への集中を削いでしまうが、音楽が主役の本アルバムはウィーン・フィルの表現力が炸裂し、音楽だけで映画を存分に味わうことができる様になっている。こんなに贅沢な映画音楽はそうそう聴けないだろう

もっと楽しく、もっと身近に。これだけの表現を見せてくれるならば、そんな楽曲をミニマに歌わせてみたい。次に選んだのは、スウェーデン生まれのDJであるラスマス・フェイバーが日本のアニメ音楽をジャズアレンジで披露する人気プロジェクトの最新作『プラチナ・ジャズ ~アニメ・スタンダード Vol.6~』から、「DANZEN! ふたりはプリキュア」だ。

プラチナ・ジャズはシリーズを通してサウンドが一貫している。プロジェクトの10周年記念タイトルとなった本作でも高音は無理な強調をせず、低音でドッシリと支える骨太なものでまとめ上げてきた。ウーファーユニットの紹介時にも触れたが、ミニマはブックシェルフタイプというキャビネットの見た目以上に低音がしっかりと鳴る。この楽曲ではそんな低音がよく感じられた。

例えばトランペットを聴いても、シンバルを聴いても、刺さるような鋭さは文字通り“鳴りを潜めている”。それによって落ち着いた大人っぽい雰囲気が漂う。でも細部が出ないというのでは決してなく、シンバルはちゃんとスティックの木質感が感じられるし、ダブルベースを弾く弦のパチンという撥弦音にもしっかりとした輪郭がある。

こういった落ち着きのあるサウンドトーンは、ヴォーカルのエミリー・マクウィンのキャラクターとも相性バツグン。アルト音域の色っぽい彼女の歌声は、シリーズ第1弾で収録された「創聖のアクエリオン」からずっと、アニメソングに“大人のジャズ”という魔法をかけ続けてきた。それは今回も健在で、スイングスタイルの賑やかなジャズサウンドに乗せた彼女の歌声は、女児向けアニメにおける代表的存在のひとつであるプリキュアを、落ち着きを保ちながらも楽しく遊ぶアダルティな世界へと見事に創り替えている。

このオトナなプリキュアとミニマの組み合わせ、僕は大いに気に入った。プリキュアという強力なイメージをジャズアレンジによって和らげ、日本語の歌詞を英語にすることで、作品に強くリンクしているアニメソングが持つ先入観を良い意味で裏切ってくれる。その意外性がプラチナ・ジャズ・プロジェクトの大きな意義だと僕は思う。アニメありきだったアニソンが、決してアニメの付属品では無く、独立した音楽として目一杯自由に翼を拡げる。アニメとは違う想像の領域をうんと拡げてくれるのである。

これは音楽が映画を強く想起させたE.T.とは真逆の効果だと言えるかもしれない。だがこれもひとつ、音楽の豊かな可能性だ。そういった音楽の楽しさを、ミニマはより活き活きと、より魅力的に描き出す。生命感溢れる音でほんのり妖艶。先のE.T.でもそうだったが、ミニマで良い音楽を奏でると、聴いていて思わず笑顔がこぼれてくる。

スウェーデン人DJのラスマス・フェイバーがプロデュースする『プラチナ・ジャズ ~アニメ・スタンダード Vol.6~』。新旧様々なアニメソングを、スイングやボサノヴァやサルサなど多彩なアレンジでリクリエーションして見せる意外性が実に楽しい。日本へも複数回ライブツアーへ来ているので、情勢が落ち着けばまた是非来日公演を期待したい

オケやジャズといったアコースティックな音源ならば、このミニマは実にゴキゲンな歌声を轟かせてくれる。ならば更に「もう一歩、普段の生活に近いジャンルはどう聴かせてくれる?」という思いで手元の普段聴きライブラリから楽曲をチョイスした。「未熟Dreamer」、アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』での作中ユニットであるAqours(アクア)が歌う、劇中歌のひとつだ。

ソナス・ファベールのスピーカーレビューで再生される事がなさそうな曲だ。ブランドイメージから言っても、クラシックやジャズなどの“オーディオ的な”ジャンルの曲で評価するのがほとんどだし、間違いなくそちらが正統派である。だからこそ、僕はあえてこの曲を選んだ。現代的なコンピュータ音源を中心とした収録・制作であろうJ-Popというジャンルの、決してホームオーディオ的ではないイメージの楽曲を、ミニマは一体どの様に歌い上げるのか。“気の合う親友”は身近な生活の音楽において、果たしてどれくらい“気が合う”かを知るために。

まずサウンドで感じたのは、ハイレゾっぽい鋭さ、レンジの広さがガッツリと出てくるという事だった。メリハリの聴いたドラムやギター、押しの強いヴォーカルは、各音のキャラクターがハッキリと出ていて解りやすい。右から左からギターの音が流れてくると、その音はそれぞれかなりしっかりと分離し、ドラムスやヴォーカルなど音数が多い中でも音像がスッと立っている。ハイレゾポップスで好まれる傾向にある“今風の音の王道を征く”感じだ。

実はこういう音源にこそ、音色に色気のあるソナスの様なスピーカーは使えると僕は思っている。と言うのも、クッキリハッキリをハイレゾで追求し過ぎると音色がどんどん均質化してしまう傾向にある、と僕は感じている。その中で例えばアンプに真空管を使ってみたり、あるいはソナスの様な箱鳴りを活用するスピーカーで歌わせてやったりすると、音楽の生命力が全体的にグッと引き出される。据え置き環境であれポータブル環境であれ、そういった体験を僕は何度もしてきた。

今回の未熟Dreamerはまさにそれだった。Aqoursの9人の歌声が、合間に入るエレキギターが、腰を据えたベースが、とても魅力的な音色を伴って歌っている。こういう所に聴き惚れて、同じ音楽でも何度も何度も聴きたくなる、そんな“聴かせる力”がこのミニマにはあるのだ。するとどうだ、同じ曲を何度も聴いているうちに、不意に新しい発見を楽曲の中に見る事がある。

例えば今回の発見をひとつ。過去の諍いを、花火をバックに和解する、というのがこの未熟Dreamerという曲のアニメ作品内における位置付けだ。同時にこの曲を以て、Aqoursは9人のグループとして完成する。夏の夜空を美しく照らす花火は、爆発の後に消えゆく様が過ぎゆく季節を惜しむように、何とも言えない寂寞をもたらす。これら爆発のエネルギーをメンバーの感情に重ね合わせ、「皆となら乗り越えられる!」と自分達の未来を信じて、消えゆくように対立の過去と決別する、そういうシーンの楽曲である。

他のAqours楽曲と比較すると、この曲は若干異質な存在かもしれない。冒頭も末尾も静かでドラムスが入っておらず、サビ前の様にフッと音が消える瞬間もある。かと思えば、花火を思わせる爆圧的な演奏も至る所に散りばめられている。思うにこの曲自体が花火であり、夏の記憶を彩る花火大会なのではないか。空を見上げ、激しく燃え上が闇夜の華を笑って愛おしむ。その様がメンバーの過去に対する諍いの記憶と向き合う姿に、想像の中であまりにも美しく重なった。

そんな事を考えながら何度も何度もこの曲を聴いていると、冒頭の儚げなギターの4音が、ドスンと力を込めて叩かれるドラムが、まるで自分達に言い聞かせるように歌うAqours9人の歌声が、とても印象的に耳の奥まで響いてきた。サウンドにおけるこの領域で、ミニマの響く力はとても強力に作用したのである。華やかで印象に強く残る音が、僕の中で音楽の記憶を何倍も美的に描いてゆく。これは生演奏とはまた違う、音色で再生を愛でるオーディオという音楽の醍醐味なのだと、改めて感じた体験だった。

この秋から第3弾アニメが始まった“プロジェクト・ラブライブ”より、前作アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の劇中歌「未熟Dreamer」。一般的なアニソンと比べて、歌って踊るアイドルアニメにおける劇中楽曲は物語そのものと極めて近い存在だ。それだけメッセージ性が濃厚であり、音楽表現による可能性はもっと追求できるだろう

ちょっと小説を読むように、音楽とおしゃべり

ペア52万円。ピュアオーディオのスピーカーとしてはミドルレンジくらいだが、ヘッドフォンなどのポータブルで考えると、ハイエンドな価格帯だ。

それでも、次のオーディオ選びにはハイエンドヘッドフォンを考えている人は、このミニマ・アマトール2も選択肢として是非検討してほしい。毎日の合間にリラックして詩を読む様にリビング空間を音楽で満たすというリスニングスタイル、何とも豊かな生活だとは思わないだろうか。

ウォルナットを身にまとったミニマ・アマトール 2で音楽を聴くとは、まさにそういう時間を過ごすことだ。語りかける音楽を聴き、自分の中で何かを思う。それはまるで友人とのおしゃべりに興じる様に、大好きな音楽達と気軽に付き合うようなのだ。日々の音楽を明るく彩りたいと願う時、ミニマ・アマトール 2はきっと、素敵な親友となってくれるに違いない。


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